新型コロナウイルス対策としてテレワークが推奨されていますが、長時間椅子に座ってパソコンや書類業務をしているデスクワーカーに共通する悩みは運動不足になりがちということです。中にはひどい腰痛に苦しむ人もいます。こうした従業員の健康上の問題を解決するツールの一つとしてバランスボールがあります。
イタリアのプラスチック製造会社が開発し、スイスでリハビリテーション用の医療器具として使われたのが最初です。その後著名なアスリートが使用していることなどで世に知られるようになり、運動不足の解消や腰痛対策に効果があるとして、東京など都市部の賃貸オフィスなどで、オフィスチェアとして導入するケースも出てきています。
素材は塩化ビニール樹脂が多く、人間が体重を預けても破損しない弾力や強度を持っています。直径は55センチや75センチなどさまざまです。メリットも多いですが、問題点もあり、正しい使い方を理解した上で使用することが大切です。
目次
デスクワークの腰痛改善にバランスボールがおすすめの理由
椅子に座って同じ姿勢を続けると、腰の周りの筋肉がゴムのような伸縮性を徐々に失い、血行が悪化して痛みを感じるようになります。人が座る時は骨盤の座骨が上半身の体重を支えています。
この座骨を通して骨盤の靭帯が緩むと、痛みが起きます。あるいは、腰の骨と骨の間にある椎間板が飛び出してしまい、神経に触れるために痛みが出ることもあります。同じ姿勢を保たないことや、体に悪い姿勢を改めることが、これらの症状の改善や予防につながります。
ボールに腰かけるとぐらぐらしますから、背筋や腹筋を使って体の重心を適切にキープしなければなりません。必然的にあちこちの筋肉を使うので、血行はよくなり、骨盤や椎間板が正常な位置に保たれ、筋肉も伸縮性を維持するので、腰痛改善や予防に効果があります。
バランスボールでデスクワークをする4つのメリット
腰痛の予防・改善以外にもバランスボールにはさまざまなメリットがあります。弾力性のあるバランスボールに腰かけると不安定です。だからこそ、ずれたり転んだりしないように常にバランスを取る必要があり、自然に体を動かすことになります。これによってさまざまな効果が生じます。
1.姿勢が良くなる
不安定なボールに座るので、猫背の人は前のめりになりがちですし、反り返る傾向がある人は後方に転倒しかねません。体の重心を臀部の中心に持っていかなければうまく座れません。
その行動を継続していくうちに、自然と体幹を意識できるようになります。そうすると、体の中心を貫く背骨や骨盤をボールに乗せるという感覚がつかめて、自然と体幹がすっと伸びた良い姿勢になっていきます。
姿勢が良くなれば、体の不調改善にもつながります。例えば、本来人の首の骨は生理的湾曲といって、ある程度曲がっているのが正常な状態です。しかし長時間デスクワークをしたりスマホを見続けると、この湾曲がなくなるストレートネックという状態になり、首が回らないと頭痛、肩こりといった症状が出ることがあります。
姿勢が良くなって体幹の状態が正常になれば、こうした症状の改善や予防につながります。
2.手軽にエクササイズができる
バランスボールは座ったままでエクササイズができます。仕事をしながら半ば無意識にバランスを取るのではなく、トレーニングをするという意識を持って行います。休憩時間にパソコンから離れ、背筋をぴんと伸ばしてボールを安定させるようにすると腹筋が鍛えられます。
それに慣れたら、左右にひねったり、腰を少し落としたり上げたりする動作を行い、体幹を鍛えます。さらに、背筋を伸ばした状態で両足を開き、ボールを股間に挟み込むようにすると、股関節のインナーマッスルについても鍛えることができます。
東京など大都市の賃貸オフィスは土地によって大きく坪単価が異なり、企業によっては広いスペースを借りることが困難な場合もあります。そうした狭いオフィス内でトレーニングジムのような運動はできませんが、ボールに座った状態でも十分に体の要所が鍛えられます。
3.ダイエット効果が期待できる
ボールに座ったままでインナーマッスルや腹筋を鍛えることで、お腹や腰回りが引き締まるダイエット効果も期待できます。オフィスに置いて、従業員の中性脂肪値が低下したという頭髪化粧品会社の事例もあります。
4.集中力が高まる
不安定なボールに座り続けると、適度な緊張感が維持されます。体だけでなく、体をコントロールしている脳も緊張状態にあるので、仕事への集中力が高まり、眠くなったり、ぼんやりしたりすることが少なくなる可能性があります。バランスを崩しそうになった場合は、一瞬仕事のことを忘れてバランスを取り戻すことに集中するので、ある種のリフレッシュ効果が生まれ、再び仕事に戻る前の気分転換になります。
バランスボールでデスクワークをする3つのデメリット
東京の賃貸オフィスなどでも利用が広がっているバランスボールですが、デメリットもあることを知っておくのが大切です。
1.筋肉疲労を起こしかねない
不安定なボールに腰かけることで、常にバランスを取るために筋肉を使い続けることになるので、あまり長時間にわたると筋肉のオーバーワークが生じる恐れがあります。普通の椅子に座るよりも体が疲弊しますし、最初のうちは使い慣れていない筋肉も動員してしまうので、後で筋肉痛になったりすることも考えられます。
2.急な動作は危険が伴う
いきなり立ち上がったり、ぱっと座ったりすることが難しいのもデメリットです。オフィスの場合得意先からの電話がかかったら素早く受話器を取るのがビジネスの礼儀ですが、ボールに座った状態では普通の椅子に座っている時のように迅速には動けません。
無理して素早くやろうとするとバランスを崩して転倒する可能性もあります。
3.業務内容次第では集中力が落ちる場合もある
自由な発想でデザインのイメージを考えるといったクリエイティブな業務では良いアイデアが生まれる効果が期待できます。しかし予算企画書の作成や、経理事務など細かな数字を扱う業務の場合は、ぐらぐらするボールを安定させるのに神経を使うあまり、本来の業務への集中力が削がれるという場合もあります。
また慣れないうちは、姿勢をキープすることに神経の大半が使われてしまうことも想定されます。
バランスボールをデスクワークで使う際の注意点
バランスボールは、正しい使い方をすることでデメリットを解消でき、社員の健康増進や仕事の能率アップにつながります。しかし、オフィスで使用する際には以下のような点に注意する必要があります。
1.適切なサイズを選ぶ
第一に大切なことは利用する社員の身長に合わせてボールのサイズを選ぶことです。例えば身長155センチから170センチの人には直径65センチのサイズが適切です。腰かけた時、膝が90度くらい曲がるのが目安です。サイズが合わないと、パソコンのモニターが見づらくなったり、作業がしにくくなったりして逆効果です。
2.ボールの弾力を最善の状態に保つ
第二に、座った時のボールの沈み具合を最適にすることがポイントです。これはボールにどれだけ空気を入れたら良いかという問題です。ボールの内部には空気を入れますが、使っているうちに、自転車のタイヤと同じように徐々に抜けていきます。最適の状態にしておかないと仕事の効率も上がりませんし、従業員の健康増進にもつながりません。
常に適切な弾力性と高さをキープするため、すぐに空気を充てんできるように空気入れを常備しておくことが大事です。
3.ボールを転がらないようにする
第三に、同僚に迷惑をかけないようにきちんと保管することです。離席する際にきちんと安定した状態にしていないと、ボールが転がってしまい、移動中の同僚が接触して転んだりすることもあります。
こうしたトラブルを防ぐために、バランスボールを固定するグッズや、はじめからボールと椅子を合体させた商品もあるので、オフィスに合ったものを選択しましょう。
4.企業イメージに合わせる
第四に、企業のイメージを考慮して使う場所を考えることです。ボールは塩化ビニール特有のにおいがありますし、カラーやツヤの状態によっては、おもちゃっぽい印象を与えかねません。
従業員しかいないオフィス内であれば、従業員の同意があれば問題ありませんが、深刻な法律相談に来た客に対して弁護士がボールに乗って体を揺らしながら対応する、警察で容疑者を取り調べる場合に刑事がボールに乗っているといった例は不適切にとらえられるので、ケースバイケースで導入を検討することも、正しい使い方の範疇に入ります。
5.臭いに気をつける
バランスボールに使われる塩化ビニール樹脂素材は、人によっては臭気を感じる場合があります。オフィスは多くの人が集まって仕事をする空間なので、においがこもりがちになります。そのため、におい対策はしっかり行った上でバランスボールを導入しましょう。
におい対策としては、水で薄めた中性洗剤でボールの表面を拭きとったり、バランスボールカバーをかけて使用したりすることが有効でしょう。
まとめ
バランスボールは、業務の効率アップと、従業員の健康増進に貢献できる健康グッズで、東京の賃貸オフィスなどでも導入する事例が増えています。腰痛対策やエクササイズ効果などのメリットがある反面、やりすぎによる筋肉疲労や転倒など思いがけないトラブルもあり得ます。
正しいボールサイズの選択、適切な空気圧の維持、同僚に迷惑をかけない保管など、運用については十分配慮する必要があります。そうした社内ルールが確立されていれば、企業にとってもメリットがあり、従業員のQOL、つまり生活の質を上げることにもつながります。