テレワークにフリーアドレスなど、ここ数年で、新しい形の働き方が次々に登場しています。そのような状況に合わせるかのように、オフィスのリニューアルを行う企業が増えてきました。

しかし、頻繁にオフィスのリニューアルが行われるわけではないので「どのような流れで改装すればよいのか」「どんなデザインが良いのか」「法律や規則にはどう対応すべきか」「予算はどう捻出すればいいのか」など、リニューアルにはさまざまな課題が伴います。

この記事では、そんなあなたの課題を解消しながら、オフィスをリニューアルする際の基本的な流れや注意点を解説していきます。

オフィスリニューアルの必要性

オフィス環境は従業員の働きやすさや生産性に直結しています。そのため、冒頭でお伝えした新しい働き方の登場や、従業員の人数増減、事業内容の変更などに合わせて、オフィス環境を変えていく必要があります。

例えばテレワークを導入して、従業員の半分がテレワーク勤務になったとします。オフィスには空席が目立ち、その空いたスペースを活用できていないのはとてももったいないことです。

出社している社員一人ひとりが、もっと広くスペースを使えるようにしたり、会議室を増やしたり、休憩するためのスペースにしたりと、環境改善と生産性向上のためにできることはたくさんあります。

使いにくかったオフィスを使いやすく、使いやすかったオフィスをもっと使いやすくリニューアルして、従業員の満足度を高めていきましょう。そのことが結果として、従業員と会社の利益に繋がっていくのです。

オフィスをリニューアルする5つのメリット

ここからはオフィスをリニューアルすることによって得られるメリットを解説します。

業務効率の向上

オフィスのリニューアルは業務効率の向上につながります。

例えば、現在の会社の状況に合わせてデザインやレイアウトを導入することで、従業員の作業スペースを効率的に活用でき、業務の流れをスムーズにすることができます。

また、テレワーク導入により、出社人数が減少したのであれば、その分空いたスペースにオンライン会議用のブースを設置することで、テレワークを行っている従業員とのコミュニケーションはもちろん、取引先との打ち合わせなども、円滑に行うことが可能です。

加えて、オフィスのレイアウトやデザインを見直すことで、会議室やコピー機、ロッカーまでの導線などを改めて最適な位置に配置することができ、従業員の移動ストレスを軽減することも、業務効率の向上につなげることができるでしょう。

維持費削減

オフィスのリニューアルは維持費の削減につながり、企業の運営コストを大きく節約することが可能です。

例えば、照明や冷暖房などの設備をエネルギー効率の良いものに変更することで、運営コストを削減することができます。例えば、蛍光灯からLEDに変えるだけで電気代が、およそ3分の1に削減できるのです。

オフィスリニューアルは、単にオフィスの見た目を良くするだけでなく、企業の利益に直結する重要な投資でもあります。

社内コミュニケーションの活性化

オフィスリニューアルにより、社内のコミュニケーションを活性化させることも可能です。

単に従業員が行き来しやすい導線を確保することもそうですが、部署やチームごとに区切られていた仕切りを外し、オープンなレイアウトにすれば、自然と部署間、チーム間での交流は増えるでしょう。

新たにカジュアルに交流できるスペースを設置することも効果的です。従業員同士のコミュニケーションの機会が増えれば、仕事に対するモチベーションが上がるだけでなく、そこから新しいアイデアが生まれたり、課題解決までのスピードが上がったりすることもあります。

企業のブランドの確立とブランドイメージの向上

オフィスリニューアルによって、企業自体のブランドを確立させ、またそのブランドイメージを向上させることが可能です。

単純に古いオフィスから新しくお洒落なオフィスに変わることでも、与える印象と訪問された方の居心地の良さが違ってきます。オフィスのデザインやレイアウトには、企業の文化や価値観を反映することができるのです。

例えば、清潔でモダンなデザインのオフィスは、「信頼できる企業」という印象を高めてくれるかもしれませんし、開放的でオープンなオフィスであれば、コミュニケーションが活発で「活力ある企業」という印象を与えてくれるかもしれません。

加えて、企業のイメージカラーをオフィスデザインに取り入れれば、オフィスに来訪された方に企業やホームページなどとの親和性を強く印象付けることができ、企業に対する好感度に繋がるとも言えます。

もちろん、取引先だけでなく、求職者に対してもポジティブな印象を与えることができるでしょう。

従業員満足度の向上

オフィスリニューアルによって、従業員の満足度や定着率を改善させることができます。

オフィスは一日の大半を過ごす場所です。そのオフィスが働きやすく、居心地の場所であれば、当然会社に対する満足度が高くなり、働く意欲やモチベーションも高まります。そうなれば、会社への愛着も沸き、おのずと定着率は上がるでしょう。

むろん、満足度や定着率の向上は、生産性の向上につながり、ひいては会社が成長するための重要な要素でもあります。

オフィスリニューアルの流れ

実際にオフィスをリニューアルするとなっても、何から手を付けてよいのかわからないという方が多いでしょう。ここでは、以下のオフィスリニューアルの基本的な流れを解説していきます。

  1. リニューアルの目的を明確にする
  2. リニューアルする箇所を決める
  3. 見積を依頼する
  4. レイアウトやデザインの決定

リニューアルの目的を明確にする

オフィスリニューアル最初のステップは、リニューアルの目的を明確にすることです。まずは、何の目的でどのようなコンセプトでリニューアルするのか決まっていなければ、動き出すことができませんし、動き出してもスムーズにリニューアルを進めることができません。

この目的は企業によってさまざまなものがあります。
例えば、

  • 生産性向上のため
  • ブランディング強化のため
  • 従業員の満足度を高めるため
  • 運営コストを削減するため
  • BCP対策のため

などです。

社内ヒアリングをしっかり行った上で、解決すべき課題や叶えるべき望みに優先順位をつけて、リニューアルの目的を確定させましょう。

リニューアルする場所を決める

目的が決まれば、次はリニューアルする箇所を決めます。目的を達成するために、どの場所をリニューアルしなければならないのか、ということはもちろんですが、仮にオフィス全体をリニューアルするとなれば、通常業務に支障をきたす事態も起こりえます。

そうした事態を想定しながら、リニューアルする場所を決めてください。

場合によっては、一時的に全従業員がテレワークに移行したり、仮のオフィスを借りる必要があったりと、リニューアルの費用に大きく影響してきますので、予算を組む際はリニューアル時の業務体制についても決めておきましょう。

見積もりを依頼

リニューアル目的と場所が決まれば、オフィスリニューアルやオフィスデザインを専門とする業者に見積もりを依頼しましょう。

この時、一社だけに依頼するのではなく、必ず複数の会社に見積もりを依頼し、そのサービス内容と金額を比較検討してください。

相見積もりは、オフィスリニューアルにかかる費用を正確に把握するために必要です。この段階で費用を把握することで、企業は予算の管理を適切に行うことができ、予算の関係でリニューアルが途中で止まるというリスクを下げることができます。

レイアウトやデザインの決定

オフィスリニューアルのプロセスにおいて、レイアウトやデザインの決定はリニューアルの目的を達成するために、非常に重要なものです。

また、什器や備品を新しく調達する場合は、デザインだけでなく機能性も重視し、レイアウトや導線を意識しながら作り上げていきましょう。

この際、社内の人間だけで決めるのではなく、先ほど見積依頼をした専門業者などにアドバイスをいただきながら、プロの目線を取り入れて決定するのが良いでしょう。

自分たちだけでは気づけなかった視点や、数多くのオフィスリニューアルに携わったプロだからこそ見えてくる視点などを、目的が達成できるだけでなく、その上でより快適に、より働きやすいオフィスを目指すことができるはずです。

オフィスリニューアル例

さて、ここからはオフィスリニューアル例を紹介していきます。

受付をリニューアル

受付エリアは訪問された方が企業と初めて接触する場所であり、この受付エリアこそがまさに「第一印象」を形成してくれます。この第一印象こそが組織や企業に対するイメージを形成の大部分を占めます。

例)
とあるIT企業は、自社の受付エリアを、会社の革新的なイメージを反映した受付エリアにリニューアルしました。

タッチスクリーンのサインインシステムや、会社の製品やプロジェクトを表示するデジタルサイネージが設置されており、高度なテクノロジーを特徴としていることが受付に来た瞬間わかります。

これにより訪問された方は、このIT企業が先進的で新しいテクノロジーに対して積極的であることを直感的に受け取ることができます。

会議室をリニューアル

生活様式の変更や働き方改革により、現代は実に多様なコミュニケーション方法が存在しています。

例)
とあるマーケティング企業は、オフィスリニューアルで会議室の環境を大きく変えました。

小規模な会議を行うための小部屋、大規模な会議やプレゼンテーションを行うための大部屋、そしてテレワークなどリモートでの参加者がコミュニケーションを取りやすいように、オンライン会議専用の設備を備えた部屋が設けられました。

これにより、今まで以上に会社から離れた場所で働いている人たちと円滑にやり取りを行うことができます。

リフレッシュできるフリースペース

オフィスにカフェのようなリフレッシュスペースを設けることは、従業員の満足度と生産性の向上につながります。

例)
とあるIT企業は、オフィスの中心部にカフェ風のリフレッシュスペースを設けました。このスペースには、コーヒーマシン、ソファ、テーブル、さらにはストレッチコーナーまでもが設置されており、仕事の合間にリフレッシュしたい従業員や、従業員同士でコミュニケーションを取るための憩いの場として利用されています。

結果的に、業務効率やチームワークの向上はもちろん、なんてことのない会話から生まれたアイデアによる新たなビジネスの可能性などを開拓することができました。

執務スペースをリニューアル

従業員の健康と安全を確保することは、安心して働くための最低条件であり、最も重要な要素でもあります。

例)
とある大手広告代理店では、感染症が流行りだしたタイミングで、感染症対策のためのオフィスリニューアルを行いました。

具体的には、執務スペースにある座席と座席の間隔が広くなるようにレイアウトを調整し、机の上には飛沫飛散防止のためのパーテーションを設置しました。

また、執務スペースに人が密集しすぎないように、オープンスペースを広めにとり、オープンスペースでも人と人との間隔を保ちつつ作業ができるようになっています。

加えて、消毒設備と体温計を各フロアに設置し、定期的な換気を行うための制度もリニューアルに合わせて作られました。

フリーアドレスにリニューアル

自由な働き方を推奨し、かつオフィスを最大限有効に使うためにフリーアドレスは効果的な方法です。

例)
とあるIT企業では、従業員の増加とテレワークや時短勤務の導入により、執務スペースをフリーアドレスにリニューアルすることにしました。

従業員の固定席を撤廃され、自由に好きな場所で仕事ができるよう机と椅子をフレキシブルな配置にしました。もちろん席の移動も自由です。

しかし、全席がフリーアドレスというわけではなく、固まっていた方が業務効率の良いチームや部署は部分的に固定席を採用しています。

加えて、集中作業をしたいときの一人用ブースも設置し、多様なワークスペースを設けています。

これにより、従業員一人ひとりが自分のスタイルやのタスク状況に合わせて最適な場所を選べるようになったのです。

オフィスリニューアルで押さえておきたいポイント

ここでは、オフィスリニューアルを行う際に、ぜひ押さえておきたいポイントをご紹介します。

オフィスの工事可能範囲

多くの賃貸オフィスは、契約時に建物内で可能な工事や改装の範囲が定められています。

どのようにリニューアルするにせよ、退去時には原状回復をしなければならないので、事前にオフィスの管理会社やオーナーに契約内容などを確認するようにしましょう。

消防法の順守

消防法とは火災を予防し、もし発生してしまった場合でも被害を最小限に食い止めるための法律です。

オフィスのレイアウトやデザインはどんなレイアウトやデザインでも良いわけではなく、従業員の安全を守るためにもこの消防法を遵守していなければなりません。

以下にオフィスリニューアル注意すべきことを挙げます。

パーテーションの高さ

パーテーションの高さが天井まで届く場合、そこは新しい部屋とみなされ、スプリンクラーなどの消火設備の設置が必要になります。

避難経路

火災などの災害が発生した際に、滞りなく避難できるかどうか、ということがチェックされます。

例えば、廊下などの通路はその幅が目安として60cmは必要。デスクとデスクの間やデスクと壁の間にもある程度の幅が必要。といったような具合です。

排煙設備

延べ床500㎡を超え、階数3回以上の建物は排煙設備の設置が必要です。この他にも、排煙設備の設置が必要な建物の条件があるので、オフィスとオフィスが入っている建物がどのような構造なのか把握しておきましょう。

もし、消防法を遵守できていないオフィスであれば、所轄の消防署からの立ち入り検査時に指導が入ります。そうなると当然、遵守するための設備を整えたりしなければならないので、追加の費用と時間を要することになります。

少しでも負担を軽減するために、最初から消防法を意識したリニューアルを進めていきましょう。

仮オフィスで通常業務への影響

オフィスリニューアル中は、その規模によりますが、何らかの工事がオフィスの一部、もしくは全体で行われています。

そのような状況では通常業務の遂行に影響が出る可能性が高いです。ですので、その影響を最低限に抑えるためにも短期で利用可能な仮オフィスを活用したり、一時的に全社員をテレワークに移行したりできるよう、前もって準備を進めておきましょう。

補助金・助成金の活用

オフィスリニューアルには、思いの外費用がかかります。その負担を少しでも軽減するためにも、補助金や助成金を積極的に活用しましょう。

以下に、オフィスリニューアルで活用できる補助金や助成金を挙げます。

IT導入補助金

中小企業に対して、ITツール導入の際に支給される補助金です。

ものづくり補助金

中小企業の革新的サービス開発や生産性向上のために支給される補助金です。

働き方改革推進支援助成金

生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組んでいる中小企業に支給される助成金です。

補助金や助成金には応募期間や審査がありますが、少しでも負担軽減するために積極的に応募してみましょう。

まとめ

企業のブランドイメージの強化、従業員の満足度向上、生産性の向上など、オフィスのリニューアルは、さまざまな目的で行われます。ですが、どんな目的で行われるにせよ従業員の働きやすさを考慮することが重要です。

リニューアルを成功させるためには、目的の他に、デザインやインテリアの決定、適切な専門業者の選定と見積もりなど、やらなければならないことが多岐にわたり、事前の入念な準備が不可欠です。

この記事を参考に、オフィスリニューアルを進め、今まで以上に全ての従業員が働きやすく、そして会社の事業が拡大できる最高のオフィス環境を作り上げましょう。