「本店のオフィスの住所を変更したいけど、本店移転登記手続きを今までしたことがないからわからない」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

会社の事務所やオフィスを移転する際、本店移転登記が必要です。書類や手続きの流れを理解すると自分でも本店移転登記の手続きを行えます。

この記事では、オフィス移転の際の本店移転登記に必要な手続きの流れや書類などについて解説します。申請方法や注意点も解説しているため、ぜひ参考にしてください。

本店移転登記は自分でできる?

結論として、本店移転登記は自分でできます。

本店移転登記とは、登記簿に登録されている会社の本店住所を変更する際に必要な登記です。

登記申請は、本人もしくは登記申請の資格を持つ司法書士・弁護士による申請が認められています。一般的には、専門家に依頼して申請することが多いですが、予算を削減したい方は、自分で本店移転登記の申請をする方法がおすすめです。 会社法によると、登記が変更になった際、2週間以内に登記申請を行わなければ、登記懈怠となり代表者個人が100万円以下の過料に処せられます。

本店移転登記に必要な手続きの流れは?

本店移転登記を初めてする方は、事前に必要な手続きの流れを把握しておくことでスムーズに申請が行えます。以下で、本店移転登記に必要な手続きの流れを解説します。

定款変更が必要か確認する

本店所在地は、定款に必ず記載する必要がある項目です。しかし、本店所在地を移転する際は、定款の変更が必要な場合とそうではない場合があります。

定款は、本店所在地の中でも最小行政区画である市町村まで記載します。例えば、定款での本店所在地が東京都中央区と記載されており、同じ東京都中央区内で移転する際は定款変更の必要がありません。

定款に記載してある所在地と異なる市町村へ移転する場合は定款変更が必要です。

議事録の作成

定款変更が必要な際は、株主総会で定款変更の特別決議が必要です。特別決議とは、議決権が過半数に当たる株主が出席し、議決権の3分の2以上の賛成で行う決議を指します。

そのため、本店移転で定款変更が必要な際は、移転登記手続き前に株主総会を開催して、特別決議により定款変更が必要です。また、本店移転の際は、取締役会で本店移転の具体的な移転日を決める必要があります。

管轄外移転か管轄内移転かの確認

移転先の住所が管轄内か管轄外かを確認する必要があります。

現在所在している会社の住所を管轄している法務局の管轄区域内の移転は「管轄内移転」、それ以外の法務局が管轄している地域に移転する場合は「管轄外移転」とされています。

管轄外移転と管轄内移転では登記申請書の数や登録免許税額が異なるため、事前に確認が必要です。

本店移転登記に必要な書類

本店移転登記の申請の際は、必要書類を提出しなければいけません。

しかし、本店移転登記に必要な書類は、管轄内移転と管轄外移転で異なります。以下では、管轄内移転と管轄外移転で必要な書類について解説します。

管轄内の本店移転場合

管轄内の本店移転の場合は以下の書類が必要です。

  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録

本店移転登記申請書

本店移転登記申請書は、以下の項目を必須で記入する必要があります。

  • 会社法人等番号
  • 商号
  • 変更前の本店所在地

など

本店移転登記申請書の後に、登録免許税3 万円の収入印紙を貼り付ける必要もあります。

株主総会議事録

本店移転で定款変更が必要な場合は、登記申請書に株主総会議事録を添付して提出しなければいけません。

株主総会議事録には、以下の情報が必要になります。

  • 開催日時
  • 場所
  • 議事の経過と結果
  • 出席役員の氏名
  • 議長の氏名
  • 議事録を作成した取締役の氏名

など

取締役会議事録

取締役会の決議により本店移転場所が決定した場合、取締役会議事録の提出をしなくてはなりません。

取締役会議事録も、株主総会議事録と同様に開催日時や場所などが必要です。

取締役会を設定してない会社の場合、取締役会議事録の代わりに取締役の過半数の一致を証明する書面を添付します。

管轄外の本店移転場合

管轄外の本店移転の場合は以下の書類提出が必要です。

  • 本店移転登記申請書
  • 印鑑届書

本店移転登記申請書

管轄外の本店移転の際は、新しく本店所在地を管轄する法務局に本店移転登記申請書の提出が必要です。

管轄内移転の場合と同様、登録免許税3万円の収入印紙を貼付して提出しましょう。

印鑑届書

管轄外本店移転の登記申請を書面で行う際は、移転先を管轄とする法務局に印鑑届の提出が必要です。

以前の印鑑カードは使えなくなるため、新しく印鑑登録をして印鑑届書を提出し、印鑑カードの交付を申請しましょう。

自分でやる場合の本店移転登記の申請方法

自分で本店移転登記を申請する方法は3つあります。以下で解説します。

オンライン

本店移転登記は、オンライン上から申請が可能です。

慣れていないと手間がかかりますが、申請ソフトは本店移転以外の登記にも利用できるため、オンライン申請に慣れておくと今後便利でしょう。

オンラインで本店移転登記を申請する手順は以下のとおりです。

  1. 登記・供託オンラインシステムに登録して、申請用総合ソフトをインストールする
  2. 申請用総合ソフトのフォーマットに必要事項を記載する
  3. 申請書類へ電子署名を付与する
  4. 申請書の情報を送信する(前所在地と移転先の管轄法務局が異なる際は、双方に送信)
  5. 登録免許税を納付する(管轄内移転の際は3万円、管轄外移転の場合は6万円の納付が必要)

法務局窓口

必要書類と登録免許税の収入印紙を準備した上で、以前の所在地である管轄法務局の窓口に提出可能です。

法務局窓口で直接申請する際は、窓口に行くための交通費や時間がかかります。

しかし、分からない点があれば直接質問に答えてくれたり、不備を教えてくれたり窓口だけのメリットも存在します。

法務局に郵送

本店移転登記は、法務局に郵送で申請可能です。法務局では、到達確認が取れる書留での郵送が推奨されています。

書類を送付する際、封筒の表面に「登記申請書在中」と明記した上で投函しましょう。郵送の場合は、法務局に届くまでに時間がかかりますが、忙しい方でも簡単に申請できます。

本店移転登記提出の際の注意点

本店移転登記提出の際に不備がある場合、申請し直す必要があります。正しく本店移転登記を提出する際には、3つのポイントに気をつけましょう。

本店移転変更登記は2週間以内に提出する

本店移転変更登記は、2週間以内に提出しましょう。

2週間以内に登記を移転先の住所に変更しなければ、登記懈怠とみなされて100万円以下の罰金の支払いを求められる場合があります。

移転日時が具体的に決まった際は、いつまでに登記申請するかを逆算した上で早めの提出を心がけましょう。

商号変更の可能性がある

本店移転登記の際は、商号変更をしなければいけない可能性があります。

商号とは主に会社名を指します。しかし、移転先の住所に同じ商号の会社がいる場合、同じ称号は使えません。

まったく同じ商号でない場合、登記自体はできますがトラブルの原因となります。トラブルを避けるためにも、入居先の商号について確認しましょう。

管轄の法務局が異なる場合は印鑑カードを再発行する

管轄の法務局が異なる場合、印鑑カードを再発行しましょう。

印鑑カードは、法人の実印(代表者印)の印鑑証明書を発行する際に提示するカードを指します。

再発行後は以前に使用していた印鑑カードが使用できなくなるため、法務局に返却してください。

本店移転登記は自分で行うことができる

本記事では、本店移転登記を自分で申請する方法について解説しました。結論として、本店移転登記の申請は自分できます。

専門家に依頼する余裕がない方も、書類作成や手続きを自分で行うことでコストをかけずに申請可能です。しかし、提出書類に不備がある場合、申請し直す必要があるため、細かく確認してから提出しましょう。

不明な点がある際は、法務局に相談しながら本店移転登記申請が行えます。しかし、少しでもコストを抑えて申請したい方は、自分での申請がおすすめです。